2019年12月18日水曜日

人手不足解消のための技能実習は法律違反

新聞などのメディア紙上で、特定技能外国人が増えないことが取り上げられている。

その原因として、制度が突貫で作られたからとか、送り出し国側の準備が整っていないとか、書類などの手続きが煩雑だから、などなどいろいろな理由が挙げられている。

一つの大きな原因は、特定技能が技能実習の延長線上で考えられていることにある。技能実習で技能を身につけてから、特定技能へ移る、というイメージである。

ところが、特定技能は単純労働も含む、とも言っている。技能実習で技能を身につけた人に単純労働をさせる、ということがありうるのか。それはおかしい。

特定技能が増えないのは、試験などの準備が遅れていることもあるが、日本の企業側が、同じ企業内で技能実習2号(3年間終了)の者が特定技能1号へ移る場合を除き、新たに特定技能を望まないからだと思われる。

特定技能外国人は、業種が同じならば転職が可能、賃金や福利厚生などで日本人と同等以上にしなければならない。

なぜ、企業は特定技能よりも技能実習を選好するのか、といえば、その理由は一つ、技能実習ならば、受け入れた企業から3年間はよそへ動かないからだ。3年間の労働力を確保できるからだ。

でも、なぜ技能実習は3年間よそへ動けないのか。それは「労働」ではなく「技能実習」だからである。

2017年に施行された「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(技能実習法)の第3条2項では、技能実習制度を労働力の需給の調整の手段とすることを明確に禁じている。すなわち、人手不足の解消手段として、技能実習制度を活用することは、明確な法律違反となる。

3年間よそへ動けないことを理由に技能実習を選好する企業は、上記の技能実習法に明確に違反している。おそらく、技能実習生を受け入れている大半の企業は、法律違反を犯している。

でも、取り締まれないのだ。本気で取り締まったら、「労働力」を確保できなくなり、企業活動は止まり、日本経済全体が動かなくなってしまうかもしれない。

行政側は、人員不足を理由に、違法行為をすべて取り締まれない、として、取り締まれないのである。

本来、「技能実習」だから3年間同じ場所であるのに、実際には、3年間動くことのできない「労働力」として使っているのである。これは、技能実習生側からすれば、詐欺になるのではないか。

「彼らだって金稼ぎに来ているのだから、いいではないか」という答えが聞こえてきそうだ。そうした状況であることは否定しない。しかし、「日本へ行ったら稼げるぞ」と言って技能実習生をリクルートしている現実からすれば、最初から、技能実習制度を隠れ蓑にして、技能実習生を「労働力」として受け入れていることになる。やはり、法律違反である。

ではどうするか。

私見では、外国から日本へ「労働者」として稼ぎに来る者は、「労働者」として受け入れるのが正しい。今の制度ならば、特定技能の手続を簡素化して、労働力として雇う企業は、原則として特定技能労働者を雇うのが望ましい。

労働者なのだから、日本人に対するのと同じように、転職の自由を認め、賃金や福利厚生のコストを負担する。

技能実習はどうなるのが良いのか。

本当の意味での「技能実習」にする。彼らは「労働者」ではなく、「見習い」「研修生」である。3年間の技能実習カリキュラムをきちんとつくり、それに合わせて人材育成をする。

3年間の「技能実習」が終わったら、「労働者」として特定技能労働者へ変わってもよいだろう。あるいは、「技能実習」中にステータスをグレードアップさせて、専門学校や大学を卒業し、高度人材となっていってもよいだろう。

何を技能実習で学ぶかを、技能実習生の送り出し側が明確にしたうえで、日本へ送る。日本ではその目的を満たせる受入企業を探して、受け入れてもらう。

技能実習と言いながら、そのイニシアティブは、送り出し側ではなく受け入れ側が持っている、というのが現状である。送り出し側が受け入れ側のニーズに合わせるのはおかしい。技能を教えてもらいたい側、送り出し側のニーズがまずあって、それに対して、受け入れ側が合わせるのが自然である。

特定技能と技能実習は明確に分けるべき、と考える。そして、技能実習を、実習を受けいれる日本側のニーズではなく、実習を受ける実習生側のニーズを出発点とする形に変え、人材を育成する本当の「技能実習」にする必要があると考える。

今のような、あたかも詐欺のような制度、事実上の違法状態が蔓延している技能実習制度を、法律が謳うまともな制度に変える。そして、稼ぐために日本へ来る者たちを労働者として受け入れる。受け入れるからには、労働条件は日本人と同じにする。転職されるのも覚悟する。

もう、今のような、国家総ぐるみでの「まやかし」の状態は止めようではないか。

0 件のコメント:

コメントを投稿