2026年6月28日日曜日

ジャカルタはキャッシュレス万能・・・ではなかった

2026年6月からジャカルタ生活が始まった。Noteに書いていた「ぐろーかる日記」をこちらで再開することにする。

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ジャカルタに着任してから2週間以上が経った。滞在査証を取得し、銀行口座を開設し、住居を定め、生活の基盤を少しずつ固めているところである。

インドネシアはコロナ禍を契機に、キャッシュレス化が急速に進んだと言われる。実際、物品の購入をオンラインで行うことは普通だし、ショッピングモールだけでなく、道端の屋台で支払ったり、寄付を募ったりするのにもQRコード決済が普及している。

筆者が最後にインドネシアで長期滞在したのは、2014年頃までだが、コロナ禍の前で、キャッシュレス化は進み始めていたが、オンライン購入はまだほとんどなかった。今回は、QR決済は活用しているが、まだ、オンライン購入まではいっていない。

QRISと呼ばれるQR決済はたしかに便利だ。屋台や寄付でも使えるのだから、どこでもQRISが使えるものだと勝手に思い込んでいたが、しばらくここで暮らし始めて、それは正しくはないと知った。

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昔から好きだったカニそば(Mie Kepiting)の店[Bakmi Kepiting 78E, Jl. Raya Mangga Besar No. 78]へ行った時のこと。暗くて薄汚い店だったのが、エアコンが入り、きれいになった店内でカニそばを食べた。


客は自分一人だけ。もちろん、味は昔と同じで、満足した。食べ終わって、当然、支払いをQRISでしようとすると・・・「使えない」という。

ではどのように払えばいいのか、と訊くと・・・

現金または銀行振込、とのこと。

カニそばの代金を払うのに銀行振込とは、ちょっと大げさでは・・・

そう思って、現金で支払った。

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数日後、Pasar Baruの金物店で品物を買った時のこと。この店は、昔から品揃えと商品知識で永続してきた金物店なのだが、支払いの段になって、やはりQRISやカードは使えない、という。

カニそばの店と同様、支払方法は、現金か銀行振込なのだ。

昔のインドネシアの商店は、商品を購入する際、まず店員に Bon(伝票)を作ってもらう。商品を店員に預けた後、Bonをレジに持って行って支払い、その支払済証を持って商品を受け取る形だった。

だから、支払う際には、「伝票をお願いします」(Minta Bon)というのが常だった。それは、食堂で食事をするときも同じだった。

今回行ったこの金物店は、今でもこの伝票方式を採っていた。なぜキャッシュレス決済にしないのか尋ねてみた。

すると、以前はやっていたが、止めたのだという。どうも、深刻な詐欺被害に遭ったらしい。それ以来、昔からのやり方に戻したのだそうだ。

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地域的に見ると、カニそばの店も金物屋も、華人系の古くからの店だった。もともと華人系の商人たちは、金銭のやり取りに厳しく、従業員やアルバイトではなく店の主人がレジを自身で預かることが普通だった。現金が一番信用できるが、QRISよりも銀行振込のほうが信用できるという感覚が興味深かった。

カニそばを一杯食べるだけの見ず知らずの客に、振込先銀行口座を教えてしまうというのも、自分としては、ちょっと不用心ではないかと思うのだが、それによって、振込元の情報も分かるから安心なのかもしれない。

QRISが使えないことで、客足が減るということもあるのかもしれない。カニそばの店も金物店も、客は自分だけだった。キャッシュレスが普通の生活をしていると、現金を持ち歩かない。持ち歩いたとしても、せいぜい10~20万ルピア程度の少額だろうし、コインは一般的ではない状況である。明らかに、QRISが使えないと客が来ない状況になる。

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この数週間歩いただけでも、昔からの店がずいぶん少なくなった印象がある。ちょっとした文房具や日用品を買おうと思っても、そうした店が周囲に見当たらず、ショッピングモールに入っている大型店に行くことも多い。

そうか、昔からの商店は、コロナ禍を経て、オンライン店舗へ移っていったのかもしれない。TokopediaやShopeeを通じれば、自分で配送する手間はなく、実店舗も必要ない。オンラインショッピングの隆盛が小規模店舗数を大幅に減少させたということは十分にありうる。

そんななかで、まだ実店舗で営業している店は、新しい顧客開拓よりも、筆者のような昔から通う顧客の信用を大事にし、そこそこの売上と利益でやっていける、そうした店が残っているのであろう。

そうした店がなくなっていくのは時間の問題なのか。それとも、キャッシュレスのリスクが大きな問題となって実店舗が復活していく可能性もあるのか。

匿名の人々が行き交うジャカルタでこのような状況のなかで、人間的つながりがまだ濃い地方の都市や農村でのキャッシュレス化は、果たしてどのような状況になっているのか。

キャッシュレス決済がビッグデータ形成に貢献し、それを誰がどのように使うのか。ビッグデータの利用者にとって、我々は単なる数にしか過ぎないのだろう。

カニそば屋や金物屋のおじさんやおばさんの顔を浮かべながらそんなことを思う。

たしかに、キャッシュレス決済は便利だが、それが失わせているものにも思いを馳せたい。


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