6月30日、東京・恵比寿に新しくできたEBIS303というイベントスペースへ行き、「地域仕掛け人市2018」というイベントに行ってきました。EBIS303というのは、スバル自動車の新社屋のなかに位置しているスペースです。
地域仕掛け人市というのは、様々な地域で活躍する「仕掛け人」が集まり、東京にいる若者たちをターゲットに、彼らを地方へ引き寄せ、あわよくば、地方で働いてもらうことを目的としたイベントでした。ただ、就職説明会や移住相談会とは違い、もう少しゆるく、地方の魅力を説明し、ファーストコンタクトしてもらえればいいな、という感じでした。
地域仕掛け人市
毎年の恒例行事のようですが、2018年は33箇所から地域仕掛け人が集まり、それぞれがブースを出して、自分たちの活動をアピールしました。他方、別室では、継業(VS起業)、働き方改革、関係人口作り、暮らしの4テーマ別セッションが行われ、複数の地域仕掛け人によるパネルトークが行われました。
まあ、言ってみれば、「地方へより多くの人材に来てもらいたい地域仕掛け人たち」と「東京ではなく地方で何かをしたい若者たち」との間の、新手のマッチングイベント、といったものでした。実際、参加者の多くは若者たちで、とくに、地域活性化に関わりたいと思っている大学生などが多く見られました。
地域活性化に関わりたいといっても、そんなに簡単なことではないよね、と思いつつ、昨今、地方創生などの言葉に踊らされて増殖する大学の傾向などが想起されました。
実際、地域仕掛け人のなかには、地方自治体も少なからず含まれ、その多くは、地域おこし協力隊としてきてくれる人材リクルートを目的としていました。
筆者は、先に挙げた4つのテーマ別セッションに参加し、実際の当事者が自分の言葉で語る姿を見ることができ、有益でした。とくに、最初のセッションで取り上げた「継業」に色々と感じ入るところがありました。
日本のほとんどの地域で人口減少・高齢化が厳しい状態となっており、東京周辺のみが人口増を享受している現状となっていることは、このイベントでも強調されていました。
その一方で、地方では、後継者がいないことで、廃業を余儀なくされる事業者が数多く存在します。そのなかには、経営的に苦しいわけではなく、いや、むしろ黒字経営で利益を上げ、顧客もしっかりいる、マーケットも持っている、にもかかわらず、後継者がいないという理由で、自分の代で事業を止める場合が少なくありません。
そうした事業者に対して、後継者を探し、マッチングさせる試みを行っている地域仕掛け人の話は、なかなか心に響くものでした。今回のセッションでは、石川県の「能登の人事部」と「七尾街づくりセンター」の話を聞きました。
能登の人事部は、能登地域で継業を希望する事業者たちが個々に人材を探すのではなく、彼らの求人情報を一手にまとめ、東京や大阪などをターゲットに、求人活動を行って、継業を希望する事業者と繋げる役割を果たしています。
実際に、能登の人事部のサイトを見ると、地域おこし協力隊の募集のほか、福祉旅行プランナー、ヘルスケアコーディネーター、和ろうそくの海外セールス担当者などの求人情報が掲載されています。Wantedlyという求人サイトをうまく活用しています。
能登の人事部が民間なのに対して、七尾街づくりセンターは半官半民の株式会社ですが、関わっている方々は、よそ者とUターン組で、いわば、外部者の目を持った人たちです。
よそ者として関わる、七尾街づくりセンターの友田氏は、どのような技術を持った人材が欲しいかという質問に対して、「とくに何かスキルや技術を持っている必要はない」「できないから恥ずかしいと思う必要はない。むしろ「できない」と公言して欲しい。必ず地元の人々が助けてくれる」と述べているのが印象的でした。
地域おこし協力隊の様々な現状なども鑑みると、上記のような、ウチとソトとを繋げる人材や組織の存在がとても重要であると思いました。このイベントに集った地域仕掛け人はまさにそのような存在であり、彼らが生き生きと活動できる地域は、きっと地域も生き生きとし続けていけるのだろうなと思いました。
それは、人口減少・高齢化に直面する地域の覚悟の問題でもあると思います。地域活性化や地方創生などを国の方針に沿った事業実施という枠だけで捉え、ウチとソトを繋げる人材や組織を便利屋、時にはうっとおしい存在、と見なしているうちは、まだまだ覚悟が足りないのではないか、と思ってしまいます。
そして、今回のイベントではまだほとんど触れられていませんでしたが、地方での仕事の担い手となってきていて、その地域に愛着を持ってくる外国人材をこれからの地域にどう活かしていくか、という視点も大事になってくるような気がします。
単なる人手としてではなく、彼らを地域を一緒につくっていく人材として位置づけ、継業や関係人口の担い手と考えていく時代が来ているように思います。とはいえ、外国人材に対する否定的な見解は、まだなかなか根強いものがありそうです。
継業や就業のために東京などで人材を探す一方、地元の人材はソトへ出て行ってしまう、という現実。その地域が好きだ、何かしたいという(外国人材を含む)ヨソ者と、地域から出て行く、あるいは地域に住みながら買い物は地域外の地方大都市へ行くというウチ者と。どちらが地域のこれからにとって役目を果たしていくのか。ヨソ者とウチ者との関係は、簡単に何か言えるものではないことは、もちろん承知しています。
そして、地域で現実と直面して格闘する人々と、その地域に研究対象として関わる学識者との関係もまた、別な意味でのヨソ者とウチ者との関係として、考えていく必要があるものと思います。
本ブログでも、今後、自分なりに色々と考えていきたいと思います。
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