新型コロナウィルス感染拡大のなかで、混雑する電車やバスを避けて、自転車で通学・通勤する人が増えている、というような話を聞きます。世界中で、ちょっとした自転車ブームが起こっているとか、いないとか。
日本で自転車というと、すぐに思いつくのはママチャリでしょうか。電動のママチャリもよく見かけるようになりました。近所へお買い物に出かけるときなど、気軽に乗れる乗り物としてのママチャリが、一般的な日本で想定される自転車だと思います。
私も、福島での移動ではママチャリを愛用しています。東京では、27インチのややスポーツ系の自転車に乗っています。
スポーツ系といえば、昔、子供の頃は、方向指示器やフォグランプの付いたスポーツ系の自転車がよく売られていて、ああいうの欲しいなあと思ったものでした。
実は、インドネシアでも、マカッサルにいるときには自転車に乗っていました。日本の感覚で、買ったのはママチャリを少し進化させたややスポーツ系の軽快車。ギヤチェンジが3段階ぐらいのものでした(下写真)。
しばらく軽快車に乗った後、友人から「交換してほしい」といわれて、後輪に泥除けの付いていない白いスポーツ系の自転車に変わりました。
自転車に乗ってあちこち散歩するのが大好きなので、当時住んでいた、マカッサル市の東部(ハサヌディン大学そば)から街の中心部(海岸沿い)へ、約8キロぐらいの道を走ろうと向かったものでした。
ところが・・・。途中にペッテラーニ通りという、片側4車線の大きな道路を横断しなければなりません。インドネシアの大通りには、当時、横断歩道がほとんどなく、自動車は途中にある方向転換路でUターンする作りになっています。ここをどうやって横断するのか。
そう、決死の覚悟で横断しなければなりません。横断歩道も、自転車が通れる歩道橋もないので、交差点で自動車の流れが少なくなったのを見計らって、一気に横断するのです。
インドネシアでは当時、交差点で左折車は一旦停止せずに、信号が赤でも左折して良い決まりになっていたので、左折車の流れが止まらないと横断できないのです(止まってくれる左折車はまずありません)。場合によっては、一時、中央分離帯に沿って逆走せざるを得ないこともあります。
そうした決死の覚悟でペッテラーニ通りを横断し、海岸へ向かって進みますが、途中でも、4車線に5列にも6列にもなった車に追い立てられ、ペテペテと呼ばれる乗合には幅寄せされ、死ぬかと思ったことは数知れません。
こうしたことを繰り返しながら、改めて実感したのは、当時のマカッサルの街は、自転車で移動することを全く想定していない、ということでした。実際、私以外で、自転車で移動している人を見かけることはありませんでした。
あまりに危ないので、自転車に乗るのは、ペッテラーニ通りよりも東側、当時住んでいた家の周辺に限ることにしました。
ところが、毎週日曜日になると、歩行者天国になった海岸通りをたくさんの自転車が走るのです。健康志向が高まり、健康のために自転車に乗りましょう、と南スラウェシ州政府やマカッサル市政府の高官や軍・警察の幹部たちが集って、海岸通りをみんなで自転車で走ります。
そして、もう一つ分かったことがありました。それは、彼らの乗っている自転車です。いずれも高級なスポーツ系で、私の乗っていた自転車の値段の3~10倍ぐらいする自転車でした。そう、自転車に乗るというのは、庶民が健康増進のために乗るのではなく、一部エリートの道楽なのだ、ということでした。
普通の人は、自転車には乗らず、バイクか乗合に乗って移動するのです。ある友人によると、バイクを購入するには、50万ルピア程度の頭金さえ払えば、あとはローン払いにして、すぐ手に入ります。他方、自転車を購入するには、ローンはなくとも、100万ルピア払わなければなりません。庶民感覚的には、バイクを購入するほうが簡単な気がするのだといいます。
インドネシアでも、自転車専用レーンが設けられたり、自転車で移動できる歩道橋などが整備されて、私がペッテラーニ通りを決死の覚悟で横断した頃に比べれば、自転車に乗れる環境は格段に整備されてきました。
それでも、インドネシアの普通の人々からみれば、自転車は一部の金持ちの楽しみであり、日曜日のカーフリーデーで乗るもの、と眺めているような気がします。自転車を買うぐらいならばバイクを買えるわけですし・・・。
ちょっと前までの自転車は、中古のボロボロの自転車にヨレヨレの格好のおじいさんが乗っている、みすぼらしく、貧しい人々の乗り物、というイメージでした。そのイメージは、バイクが普及することで払拭され、バイクに乗ることが貧しさからの脱出のシンボルとイメージされました。
なお、ジャワ島の田舎では、日本と同じようなママチャリ型の自転車がけっこう普及していて、自転車自体は中国製のようなのですが、日本自転車(Speda Jepang)とよばれています(下写真)。
以上、インドネシアでの自転車は、日本や欧米での自転車とはちょっと違ったイメージで捉えられている可能性がある、というお話でした。
0 件のコメント:
コメントを投稿