→禅と瞑想
私の好きなことは食べ歩き。とりわけ、その土地でしか食べられない美味しいものを探して、その土地で堪能することが何よりも好きです。
とくに、アジア。アジアなら、インドネシアだけでなく、どこへ行っても嬉しくて楽しいのは、ひとえに食べ物のおかげです。食べ物のおかげで、アジアから離れられなくなっているといっても過言ではありません。
毎日3食とも麺を食べるのは幸せ。毎日3食、2週間ずっとインド料理だけというのもとても嬉しいです。ペナンで1日5食食べたときは、本当に幸せでした。
そんな食べ物たちと出会えなくなって久しく、もう本当に食べたくて食べたくて、禁断症状がしょっちゅう出てきてしまいます。
なかでも、禁断症状が一番強く出るのが、インドネシア・マカッサルのワンタン麺!
マカッサルに住んでいたとき、そして出張で行っても、週に2~3回は必ず食べに行った、私の大好物なのです。ひいきにしている店が5~6店あって、今日は細麺が食べたいと思ったらあの店、油分の強いコッテリ系のスープが飲みたければあの店、ワンタンに加えて臓物も載せたければあの店、と、その日の気分で、どの店にするかを決めて食べに行きます。
面白いことに、麺、スープ、ワンタンのすべてが揃って美味しいという店はなく、微妙にそれそれのバランスが取れていないのです。それがまたいいのですが。
マカッサルのワンタン麺は、たとえばジャカルタのそれとはかなり異なります。
麺はやや太麺でコシあり。茹でた鶏肉と赤く縁取りされた焼豚。茹でワンタンと揚げワンタン。好みに応じて鶏の腸などの内臓が載ります。
スープは鶏ガラスープに青ネギがパラパラ。ごま油をスープまたは麺の上に好みの量かけます。ごま油をかけるのがポイントで、風味がぐっと増すのです。
そして、サンバル(チリソース)を適量、麺の上にかけます。このサンバルは、一般に、サンバル・マカッサルまたはサンバル・クニンと呼ばれるマカッサルのサンバルで、ちょっと黄色っぽい赤い色をしており、通常のサンバルABCなどに比べるとずっと辛いのです。でも、このサンバルでないと、マカッサルのワンタン麺にはなりません。
こうして、私の場合は、スープを少しずつ、スプーンで麺の上にかけていきます。ある程度かけて、麺となじませたら、おもむろに食べ始めます。
パリパリした揚げワンタンをスープに浸しながら、パリパリとシナシナを両方楽しみ、サンバルの辛さと焼豚の甘さの絶妙はミックスを味わい、ごま油の香りに惹かれながら、麺を食べていきます。
メニューにあるのは大か小のみ。私は必ず大を頼みますが、一般的には、小で十分な量です。
私がよく行った5~6軒のワンタン麺屋は、いわゆる中華街(pecinaan)と呼ばれる海岸近くの一画にあります。そして、ワンタン麺を食べていると、必ず現れるギター弾きのお兄さんがいます。違う店で食べていても、あたかも私の居場所を常に察しているかのように、なぜか必ず彼が現れるのです。それも、かつてマカッサルに住んでいるときからなので、もう25年もの付き合いになります。
名前も知らず、歌も下手なのですが、私がマカッサルでワンタン麺を食べに行くと、必ず彼が現れて、ギターの弾き語りをする、少しお礼を払ってあげる、というのがいつものパターンです。私のマカッサルのワンタン麺と彼は離れがたいものなのです。
マカッサルに住んでいたとき、同じJICAのたくさんの青年海外協力隊員の皆さんとも知り合いになりました。帰国前にご馳走しようと思って、ワンタン麺にしようというと、意外なことに、マカッサルのワンタン麺を知らない方々が多かった記憶があります。マカッサル以外の地方で活動しているということもありますが、おそらく、日頃はムスリムの方々との付き合いがほとんどなので、豚がどっぷり入ったこのワンタン麺のことを存じないままだったのだろう、と察します。彼らをワンタン麺屋へ連れていくと、必ずといっていいほど喜ばれたものでした。
ジャカルタにも、クラパガディンに何軒かマカッサルのワンタン麺を出す店がありますが、あのマカッサルの本物とは違うものでした。スラバヤにも別のマカッサルのワンタン麺を出す店がありましたが、違うものでした。残念ながら、あの美味しさは、マカッサルでしか味わえない美味しさなのだと知りました。
ワンタン麺を出す店のなかには、海南鶏飯やコーヒーも出す店があり、その多くは丸テーブルです。他方、揚げ焼きそば(Mi Kering)やナシゴレンを出す店では、ワンタン麺は出てきません。
マカッサルでは、ワンタン麺や海南鶏飯を出す店は海南系の子孫、揚げ焼きそばやナシゴレンを出す店は広東系の子孫、などと言われていました。
もちろん、マカッサルの揚げ焼きそばもナシゴレンも大好きで、とくに揚げ焼きそばはインドネシアで一番美味しいと思いますが、その話はまた別途としたいと思います。
ともかく、そろそろ、マカッサルのワンタン麺が恋しくて恋しくて、本当にヤバいです。
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