2017年3月2日木曜日

ワークショップで嬉しかったこと

今回の食品加工機械に関するワークショップ、昨日から2日間、別の参加者によるワークショップが行われました。


ワークショップで取り上げるのは、せんべい焼き機とエクストゥルーダーです。せんべい焼き機は、上板と下板の二つの分厚い鉄板で型を押し、熱を加えてせんべいにする機械です。

一方、エクストゥルーダーは、2本のスクリューを組み合わせながら徐々に外へ物体を押し出す装置で、水と熱の力でフワッとした物体ができ、それを外へ押し出します。押し出された物体を切り、味をつけ、さらに乾燥機で熱風乾燥すると、油を使わずに、揚げせんべいのような、パリッ、サクッとした食感の「せんべい」を作ることができます。

昨日は、主に、せんべい機の使い方を学び、今日はエクストゥルーダーについて学ぶという内容でした。でも今日、開始時間の午前9時に会場へ入ると、参加者が皆、機械の周りに見当たりません。まだ来てないのかな、インドネシアではよくあることだし、と思っていたら、それは間違っていました。彼らはどこにいたのでしょうか。

彼らは全員、準備室に入っていました。

準備室は、実際にワークショップの機械で使う原材料を用意する場所で、昨日は、せんべいの素になるタネのレシピを丁寧に教え、そのタネを使ってせんべい機でせんべいを作ってみたのでした。

でも、彼らは昨日の復習をしていたのではありませんでした。昨日学んだことをもとに、自分たちでレシピを考案していたのでした。チョコレートを使ってみたい、ココナッツミルクを入れたい、レモン汁を加えてみたい、と、自らも菓子を製造販売している彼らは、幾つかの独自のレシピを作り、それをせんべい機で試そうとしていました。


教えられたことはその通りする、しかし自分たちで新しいものを創る能力は乏しい。これは、インドネシア人の特質として、日系企業などでよく言われていることです。しかし、彼らは、どうしても自分たちのレシピを試したいのでした。

我々のチームリーダーは、「こんなに積極的に自分たちで何かやりたいと言ってやってしまうワークショップ参加者は初めてだ」と目を丸くしながら、とても嬉しそうでした。

実際、彼らのレシピで作ったせんべいは、より香ばしく、レモンの微妙な酸っぱさが隠し味になっていて、とても美味しいものでした。自分たちのレシピを試し、我々のチームリーダーからその成果に二重丸をもらった彼らは、本当に嬉しそうでした。

ワークショップが終わって、反省会の中で、参加者のリーダー格の女性が質問しました。せんべい1枚の重量からすると、せんべい機で1日に何キログラムのせんべいを作れるか、エクストゥルーダーを使った場合と彼らの手作業とを比較した際の生産性がどれぐらい異なるか、等など、細かい技術的な質問をいろいろしました。

チームはその一つ一つに丁寧に答えていました。すると、一連の質疑応答の後、質問した参加者が謝り始めました。こんなに細かいことをいろいろ聞いて失礼ではなかったか、と。我々からは、そんなことは全く失礼ではなく、逆に、意味のない美辞麗句をもらうよりもずっと嬉しいし、とても良かったと答えました。

私は、相手が誰であろうと、聞きたいと思ったことは同じように聞いてほしい、と付け加えました。そんな質問を正々堂々とする参加者がいたことが、私もとても嬉しかったからです。

ワークショップの開会式で、参加者の自己紹介と自分の製品の説明をし合う、ということも、会場の飲食品・包装センターが取り入れていきました。

また、エクトゥルーダーのような価格の高い機械を中小企業がどうやって使えるようにするか、という議論も行われました。価格が高いけれど使ってみたい、なぜなら生産性が大幅に向上するからだ、原材料がたくさんあるのでもっと生産量を増やしたい、ではどうしたら、エクストゥルーダーをみんなで使えるか。

そんな議論をワークショップの最後のほうでしていると、「皆んなで協同組合を作ろう」「協同組合の組合員で資金を出し合い、銀行からの融資を受けたらエクストゥルーダーを買えるのではないか」「みんなが平等に機械を使えるように順番をはっきりさせる」、などなどの意見や考えが表明され、いつの間にか、参加者全員が等しくエクストゥルーダーを使ってみたいという雰囲気になっていきました。

もしかすると、高価な機械をいくつかの中小企業がシェアしながら活用する、というモデルは、彼らインドネシア人の中から現れてくるかもしれない、と思いました。もしそんなモデルがこの東ジャワから生まれたら、もちろん世界へ貢献することになり、シェアリング・エコノミーの新しい一つの形態となるかもしれない。そんなことまで、考えてしまうような、参加者の熱気に煽られていました。

そんな風に思われる、今回の機械たちとそれを製造した大阪の中小企業は、きっと幸せ者なのだと思いました。

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