2023年10月10日火曜日

千葉大学から新小岩へ

昨日(10/8)、午前中は、1ヵ月に2回発行しているウェブ情報マガジン『よりどりインドネシア』を何とか発行できた。今回で第151号。いつものことだが、レギュラー執筆者の執筆状況を勘案しながら、自分の原稿を最後に入れていく。今回は、数々の失敗を重ねてきたインドネシアの大規模食糧基地プロジェクトについて書いた。『よりどりインドネシア』については、以下のページでバックナンバーも含めてご覧いただければありがたい。

よりどりインドネシア

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『よりどりインドネシア』第151号を発行して、すぐに千葉大学へ向かう。千葉大学で開催される「日本語を母語としない親と子どものための進路ガイダンス」を見学するためである。見学して驚いた。設けられた2部屋はどちらも今度高校を受験する予定の当該生徒とその保護者、13校からの高校職員、ガイダンスを運営するボランティアや学生でいっぱいだった。この「進路ガイダンス」は2002年に始まり、これまでにのべ8,000人の対象生徒・保護者が受講してきた。

最初の千葉県の入試制度についての説明は、各自がYouTubeで各言語に訳された動画をスマホで観て理解する斬新な形式だった。この説明はスマホでいつでも繰り返し観ることができる。この後、13高校の担当教員による学校紹介が1校ずつ続けて行われ、さらに、高校生活を送る外国つながりの先輩たちへのインタビューがあった(インタビューの最後には各々の母国語で対象生徒・保護者へ向けてメッセージが発せられた)。その後、言語別分科会となり、各言語ごとに生徒・保護者がテーブルを囲み、そこへ高校教員が出向いて説明と相談を行なった。最後は、各高校ごとにブースが設けられ、担当教員と個別相談が行われた。

今回対応した言語は、中国語、ネパール語、スペイン語、ポルトガル語、フィリピノ語、ベトナム語、ダリ語(アフガニスタン出身者向けで男女別に対応)、タイ語で、それぞれの言語に対応した通訳を用意していた。

千葉県は、28の高校で面接と作文(日本語または英語)で受験できる外国人特別選抜入試を実施している。その内訳は、全日制普通科が7校、全日制総合学科・国際科が4校、全日制工業科が1校、三部定時制(夜間部)が3校、定時制普通科が8校、定時制総合学科が1校、定時制工業科が2校、定時制商業科が2校である。それでも、高校での授業は日本語となるので、高校紹介では、どの高校も日本語をしっかり勉強してほしいと強調していた。

それにしても、毎年開催しているとはいえ、これだけたくさんの方々が様々な形で関わって、「進路ガイダンス」を熱意を持って運営していることはすごいことだと感じた。しかも、同様の「進路ガイダンス」を松戸市や市川市でも開催するのだ。その母体となってきた、千葉県内の日本語教育関係者をつなぐ房総多文化ネットワークの役割は強調してもし過ぎることはないと思う。

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夕方、千葉大学を後にし、新小岩へ向かう。葛飾区の関係者と今、新小岩で多文化まち歩きを実施できないかと相談中なのだ。先週、葛飾区地域振興部と話し合いを持ち、新小岩の商店街の関係者と話し合いをしたいと考えている。でもその前に、自分自身の目で新小岩の商店街を少し歩いておきたいと思ったのだ。

あいにく雨が降り始めたので、新小岩駅を降りると、まっすぐ、アーケードの付いたルミエール商店街へ向かう。まずは、全長400メートル以上のルミエール商店街の端から端まで歩いてみる。周りが暗くなっていたせいもあるが、ルミエール商店街はそれなりの人の流れがあり、お店もずいぶん開いていた。意外に地元の店が多い印象で、そのなかに、最近できたと思しき外国人経営の飲食店や食材店が散見できた。

多文化まち歩きでは、できれば、日本人の商店街の皆さんと外国人経営者とが関わるきっかけ作りにもしたいと考えているが、その前に、実際にどの外国人経営の店を訪問するか、ある程度の当たりを付けておいたほうがよいかもしれない。そう思って、あまり人で混んでいない、店主と色々話のできそうな店を選んで、思い切って店のなかへ入ってみた。

まず入ったのは、ルミエール商店街から少し入ったところにある「中華面食」という店。日本唯一の手作り中国パン屋と銘打ち、店内には様々な日本では見かけないパン、パイ、お焼き、月餅などが売られていた。常時、40種類以上を用意しているそうで、先の中秋の名月のときには20種類以上の月餅を作って売ったそうだ。一番のおすすめはお焼きだが、長野のお焼きとは違うもの。テレビ取材も20件以上受けて、メディアでも結構知られる存在らしい。

ご主人の王さんは北京出身、今は横浜在住で、新小岩の店まで毎日通う。もともと中華料理店の調理人として30年以上前に来日し、様々な調理場を経験、最後には大手のマーケッターとして世界をまわったそうだが、退職し、1年半前にここ新小岩に店を出した。まだ店を出したばっかりということで、地元の商店街組合などとは関わっていないが、もう少ししたら組合加入したい意向のようだ。新小岩を選んだのは、中国人コミュニティがあったためだが、実際の客では8割が日本人とのこと。遠くからもわざわざ買いに来てくるそうだ。

中華面食でしばし歓談した後、そういえば昼食がまだだったため、何か空腹を満たしたいと思い、どこかのエスニック料理店に入ろうと歩き、入ったのがバングラデシュ料理店の「アディバ」。あまり期待していなかったが、注文したチキンビリヤニはスパイシーでそれなりの美味しさだった。

たまたま客が自分一人だったので、給仕してくれる方に話しかけたら、この店のオーナーのミアさんだった。彼は新小岩に店を出して7年になるといい、今は小岩に住んでいる。かつて日暮里に住んでいたときには、我が家から遠くないマスジド大塚で礼拝していたようだ。今は新小岩モスクで礼拝をし、新小岩周辺の20人以上のバングラデシュ人とも頻繁にモスクで会うそうだ。新小岩・小岩のバングラデシュ人のリーダー的存在の方が新小岩モスクの理事でもあるとのことである。新小岩駅近くには、日本語学校がいくつかあって、新しいバングラデシュ人はそこの生徒が多いということだ。ミアさんの子ども3人は地元の公立学校に通っており、ベンガル語と日本語のバイリンガルだそうだ。かつて子どもたちにはいじめなどもあったようだが、今は楽しく学校へ行っているという。

またこの店、ハラールと銘打っているのに夜はバングラ呑み屋になり、日本の飲み屋メニューにバングラ式の料理を加えた面白いつまみが色々ある。訊くと、調理人はもともと日本の呑み屋で働いていたという。期待しないで入った店だったが、意外にも、なかなか面白そうな店だった。

新小岩の外国人経営の店めぐりは、まだ何回かする必要がありそうだ。近いうちに、また別の店を訪問しながら、ルミエール商店街から少し離れた他の商店街も歩いてみたい。

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ハマスによるイスラエルへのテロ攻撃、それに続くイスラエルの報復と戦争宣言、という急展開について、歴史的な背景を含め、いろいろなことを考え、思う。どちらが白か、黒かを単純化する話はできない。今回の事態で今後の世界は相当にまずい方向へ向かってしまうのではないか。それを少しでも抑制・反転させるために、我々は何をしなければならないのか。世界が、我々が良心を失う前になすべきことは何か。

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