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2017年5月3日水曜日

ふと思い出した農林21号のこと

福島から戻って、東京の自宅で家族とのんびり過ごしていた憲法記念日。

何気なくテレビを観ていたら、「ラブ米」というアニメをやっていました。米を題材とした作品で、農林水産省ともタイアップしているアニメらしいのですが、それを見ながら、ふと、農林21号のことを思い出しました。

昔、子どもの頃、「一番うまい米だぞ。寿司米には最高なんだ」と父に言われて、たまに食べさせてもらったのが農林21号でした。福島では当時、最上級の品質の米で、私はずっと、一番美味しい米は農林21号だと信じてきました。その後、コシヒカリやらササニシキやらがメジャーになり、いつしか、農林21号という名前を聞かなくなっていきました。

もう今やないのかと思って、グーグルで検索すると、石川県加賀市で今、農林21号の復活を試みていることを知りました。詳細は以下のページを参照してください。

 農林21号について

農林21号は手植え時代の品種で、田植え機の普及などにより機械化農業では扱いにくい品種となり、機械化に適した品種へと変わっていくなかで、農林21号の出番はなくなっていったようです。(コシヒカリに関する記述は誤っていましたので削除しました)

記事によると、私にとってはおなじみだった農林21号は北陸地方が原産で、今では「幻の米」。かつての主生産地はやはり福島県でした。そして、東日本大震災を契機に、福島県での農林21号の生産が途絶えて、「幻の米」になってしまったと言うことです。

震災の翌年、農林21号の種籾を求めて、加賀市は福島県の生産地を訪れましたが、かつての生産者のもとにも県の試験場にも種籾は残っていなかったそうです。最終的に、つくば市の農業生物資源研究所に残っていた種籾を一握り加賀市へ持ち帰り、種々の検討の結果、小学校の学習用圃場で無農薬の化学肥料不使用で栽培しました。

すると、それを聞きつけた福島県の農家が2016年、地域活性化の起爆剤として、もう一度農林21号を植えたいとして、何とか種籾を分けてもらえないかと、加賀市を訪ねてきたそうです。結局、田植え学習をする小学生たちから、福島県の農家へ苗が渡されたのだそうです。

果たしてまた、福島県で農林21号が復活するかどうか。コシヒカリに比べて収量が少なく、機械化にも適さない、肥料も多投しない農林21号は、うまくいけば、差別化された付加価値の高い、安全安心の高級米としてよみがえるかもしれません。

いったん絶えた種籾を復活させ、地域おこしにつなげた例としては、宮城県大崎市の「鳴子の米プロジェクト」の「ゆきむすび」があります。寒冷地である鳴子地方の特有種で、餅米のように粘りが強いのが特色でしたが、高齢化・後継者不足による耕作放棄などで途絶えてしまいました。

 鳴子の米プロジェクト

それを、生産者と消費者と結びつけながら、耕作放棄された田んぼで生産を復活させ、おにぎりなどの地域の食の振興を通じた地域おこしへつなげていきました。

農業機械化とともに失われていった日本各地の米の固有種のなかには、農林21号のような優れた品種が少なくなかったことと思います。安全安心とともに、他と違う美味しさが価値として求められる時代を迎え、昔ながらの手をかけた固有種の復活の機会が出てきているようにも思います。それは、既存の機械化農業とは一線を画し、むしろ希少性を価値として、その価値のわかる消費者とつなげることで生きてくるのではないでしょうか。

つい最近、農林水産省は主要農作物種子法の廃止法案を国会へ提出し、可決されてしまいました。農林21号やゆきむすびの復活は、種子に関する主権を生産者が自分の手に持ち続ける動きの一つと見なせるかもしれません。

大きな流れからすれば小さな動きではありますが、こうした動きを地道に続けていくことで、諦めない農業を生産者と消費者が一緒に育んでいくことがこれからますます重要になる気がしています。

それにしても、もう一度、あの農林21号で美味しいお寿司を食べたいものです。本当に美味しいんですから。

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